06 | 2025/07 | 08 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
・『吾亦紅』の続きです。
・将臣が平家に拾われてちょっと経ってからの話。
・重盛病死後、惟盛は平家内で不安定な立場になっています。
・当家の将臣は基本弟とか子供属性に弱く出来ております。
・当家の知盛は普段は比較的普通の人です。
・ちょっと短めですが、それでも宜しければ続きからどぞ。
「何をされていらっしゃるのですか、兄上」
笑いを含んだ声を掛けられ、将臣は、見りゃ分からねぇか?、と相手の顔も見ずに肩を竦めた。声の主は音も無く側に寄ると、将臣の腕の中を覗き込んだ。
「いくら可愛いからといって、実の息子に手を出しては不味いのでは?」
「俺はこんなでかい息子を持った覚えはねぇ。てか、その呼び方やめろ」
「……人の甥に何手ぇ出してるんだ有川」
「それも間違ってるわ、馬鹿野郎っ」
小声で牙を剥く将臣をさらりと流し、知盛は大人しく寝息を立てている甥の柔らかな髪に触れた。
若りし頃の父と同じ亜麻色の髪。兄や自分なんぞより余程血が似ているだろうに、この甥は一族からは爪弾きにされている。
確かに将としては役に立たない儚い性。しかし、楽を愛し風流を好とするその心は、一族の誰よりも父である清盛に似ていた。
有川がいつか言っていた、同族嫌悪とは正にこの事。
父は風流を解そうとする反面で、その心の動きを自らの弱さと思い込んでいる節がある。
「だいぶ、細くなったな」
将臣が顔を上げ、しかし直ぐに逸らした。
「やっぱりそう思うか?」
「もう少し、母親似の肉付きの良い身体だったと思ったけどなぁ」
「お前こそ何て目で見てやがるんだ」
遠ざけるように手を払い退けた将臣に、知盛は、くっ、と唇を歪ませた。
「惟盛に気があるのは経正だろう。……あぁ、重衡も時折何やら突いて遊んでいるようだがな」
「経正は良いとして、重衡の方はお前知ってたんなら止めろよ。あいつ変な所捻くれてんだから」
「兄上が直接お叱りすれば良いではありませんか。私が言っても聞くような奴ではありますまい」
お前なぁ、と眉を潜めた将臣に笑って、知盛はもう一度惟盛の頭を撫でた。将臣の腕の中安心しきって眠る惟盛の目尻に涙の跡を見付け、そっと拭ってやる。
余程父が恋しかったのだろう。拭った指をぼんやり目の前に翳して、知盛は目を細めた。
元気だった兄は、病にかかってあっさり亡くなってしまったのだ。余りに突然過ぎて、知盛でさえ当時は呑む込むまでに時間が掛かった。この優しく甘ったるい甥には随分堪えたに違いない。
「知盛、俺はどうしたら良いんだろうな」
惟盛の背をとんとんと叩きながらの呟きに、知盛は将臣の顔を見遣った。
その顔に浮かんでいるのは戸惑い。
「俺が此処に居るから色々と可笑しくなってるんだとしたら、俺は――」
「――俺は、何だ?だとしたら、どうすると?」
途切れた言葉を問い返せば、将臣は苦笑して首を傾けた。暫くしてから、言わせるのかよ、と淋しげな声。
知盛は嘆息すると、将臣の腕を退けて惟盛の身体を抱き起こした。きょとんと見守る将臣には構わずそのまま抱き上げる。
「有川。俺達を理由にするんじゃない。自分を理由にしろ」
将臣の顎がぴくりと動いた。
「誰かの為になんて、人に理由を求めるな。自分がやりたいからやる。やりたくないのであればやるな――俺達は、お前とは所詮赤の他人だ」
口を引き結んだ将臣から転じて、知盛は几帳と衝立の置かれた寝所へと足を向ける。
ひたりひたりと歩きながら、変わらず眠り続ける惟盛を覗き見る。助ける気は無いが、流石に見捨てる気も無かった。しかし元よりこの気性。自分が生きるのすら面倒なのに、甥とはいえ人の事をあれこれと世話が焼ける筈がなかった。
(…………面倒な)
それなのに、自分の事より他人の事を考える馬鹿がいる。身内なら未だしも、何故そんなに深刻になれるのだろうか。
寝所に惟盛を寝かせて衝立から出た知盛は、俯いて床を睨み付けている将臣を見付けて片眉を上げた。一歩足を踏み出すと同時に、ぐっと力強く将臣の頭が上がった。その顔を見て、知盛は、くっと笑った。
立ち止まることなく歩を進め、将臣の側を通り過ぎるほんの一瞬に、とん、と肩を叩く。
「おぅ」
短く返った返答にまた笑って、知盛は簾を潜って房を出る。直ぐに追うように将臣も出て来て肩を隣に並べた。その顔にいつも通りの飄々としたものが戻ってきたのを認め、知盛は目を細めた。そんな知盛に将臣が懐から薬包を取り出して眼前で振って見せる。
「お前も飲むか?」
苦笑いに失笑を返す。
「飲めたもんじゃない」
知盛は顔を歪めると大袈裟に肩を竦めた。
「そんな甘ったるいもの、酒でもなければ俺には飲めん」
辟易とした口調に、自覚あるのか、と将臣が笑うので、知盛は腕を組んで唯一言、さぁな、と面倒そうに返事をした。
知盛真面目過ぎませんか?、という苦情は受け付けておりません。
戦い大好きーなだけで、割りと平家内ではまともだと思うのです。何でもかんでも狂った思考だったら将臣くん可愛そうじゃないですか(ホロリ)
どちらかと言えば重衡の方が捻くれてそうなイメージ。拙宅では、人としてどーよなのはむしろ弟の方だったりします。
そして管理人に贔屓されている所為か、惟盛の構われっぷりが酷い事になってますね!(笑)
完全に弱者扱い(良い意味で)ですね!可愛いですね惟盛!
本当に可愛くてどうしてくれようかって感じですね!(こらこら)
属性うさぎな気がしてなりません。しかも垂れ耳系の。
あ、そっか重衡は猟犬ですね?なんだーそっかーだからかー(納得)
なら色々と仕方ありませんね!