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・忍人と那岐がベッタリです。既にベッタベタです。
・風早×柊前提です。
・ちょっと忍人が弱気です。
・甘いの承知で大丈夫!な方は続きからどぞ。
「いい加減にして下さい」
厳しく響いた声に、辺りがざわめく。
狗奴の鍛練を見ていた俺は、思わずそちらに目を走らせた。長身の男が二人、言い合いをしている。
見知った二人の顔付きが常とは違っていて、まじまじと様子を見てしまっていた俺は、同じく手を止めてしまった狗奴達に気付き慌てて声を飛ばした。
一度髪を掻き上げて腕を組む。
平静を装うが、正直気が散って仕方がなかった。
風に途切れ途切れに混じって届く声を、頭を振って追い払おうとするが余り効果は得られない。
(仕方ない…)
俺は嘆息すると、狗奴に声を掛けてその場を離れた。
「忍人、また眉間に皺が寄ってる」
間延びした声に指摘され、俺は瞬いた。見上げてくる碧眼に、済まない、と苦笑する。
「ごめん。僕邪魔だった?」
俺の寝台で寝そべっていた那岐が怠そうに起き上がった。少し困った風の彼に苦笑して、寝台の端に腰を掛け柔らかい髪に手を伸ばす。撫で梳いてやると気持ち良さげに目を細めた。
「済まない。気になっている事があって、少し考え込んでいた」
ふぅん、と返事をした彼は、しかしやっぱり少し気不味そうに居住まいを正した。それに、大丈夫だ、と苦笑する。
「俺が気になっているだけだから」
そう、と安心したように笑って那岐が肩を下げた。
「済まない。気を遣わせたな」
「僕が勝手してるんだから忍人が謝る事ないだろ」
「そうだが…」
笑った俺に那岐はちょっと視線を逸らした後、ねぇ、と首を傾げた。
「忍人が気になっている事って何?寝床奪ったお返しに話くらいは聞いてあげるよ」
顔を近づけた那岐が俺の眉間を突いた。
「忍人はもう少し笑った方が良い…少なくとも、僕は笑ってて欲しい」
首に腕を絡めてぽんぽんと片手で俺の背を叩く。那岐の髪から日なたの匂いが微かに薫ってきて、それにほっと心が軽くなる。
俺は那岐の頭に頬を擦り寄せて背中を同じように撫でた。
「今、那岐がいてくれて良かった」
彼は、そう?、と自慢げに笑うと、ぎゅっと抱き付いてきた。
どうしたものか、と嘆息すると、隣で寄り添うように肩に凭れていた那岐が、ふぅん、と興味なさげに呟いた。
「風早と柊がね…」
独り言のように呟いて髪を掻き上げた彼は小さく首を傾げた。
「単なる痴話喧嘩っぽいけど」
にべもなく一刀両断した彼にぐっと黙り込む。
確かに、痴話喧嘩にしか見えなかった。そしてきっと多分、実際にそうなのだろう。
「風早が鬱陶しいのは僕も身をもって知ってるし。相手は柊なんだから、放って置けば元鞘に戻るよ」
「そうだな…」
世話焼きの風早の事だ。口を出し過ぎたのだろう。柊は人と必要以上につるんだりしないから。
そう。きっと理由は簡単なのだ。構い過ぎて、疎ましがられた。ただそれだけ。
那岐の言う通り、大の大人が喧嘩の一つで騒ぐものではない。
(騒ぐ…ものではないのだが)
釈然としなかった。
放って置く、という選択肢がどうしても自分にとって最善ではないような気がした。
そっと嘆息する。
黙り込んだ俺を見て、那岐が手を握り締めた。
「忍人は二人が心配なんだ?」
――――心配?
俺は首を傾けた。
「心配…なのか?」
確かに、何をしているんだ、と人並みの心配はしていると思う。しかし、すっきりしないこの感情は、それとは似ているようで別物だった。
「ふぅん?違うのか。一応あれでも二人共忍人の兄弟子なんだろ?だからてっきり……」
「…………」
肩を竦めて天井を仰いだ那岐を凝視する。
――――忍人。
頭の中に声が閃いた。
――――何、仏頂面してるんだよ、忍人。
豪快に笑って幼い俺の頭を掻き回した人。
そんな俺を可笑しそうに見る柊と、ぐちゃぐちゃになった髪を一緒に整えてくれた風早。
小さな俺は見上げる事しか出来なくて、置いていかれそうになると、自分の袖を掴めと皆が笑う。
「そうか……」
眩しいあの頃。
今は端から綻んで切れ切れになってしまった。
「忍人?」
那岐が両手で俺の頬を包んだ。
「那岐…俺は多分不安なんだ」
那岐の手に自分の手を重ねて俺は呟いた。那岐が、そっと顔を寄せた。
「何が、怖いの?」
覗き込む瞳は澄んでいて、掛けられた声は優しかった。
「俺は、風早達が一緒でないと、嫌らしい」
「うん」
「同門だからと、何かあるとは思ってはいなかったが、風早と柊が仲違いするのを見ると、落ち着かないんだ」
まるで大人の顔色を疑う子供のようだ。
いや、きっとその通りなのだ。
一人一人と欠けていった懐かしい人達が、今また自分の傍にいる。色々と擦れ違いもあったけれど、子供だった自分にとって彼らという世界が絶対だった。
馬鹿をやって笑って、そんな毎日が当たり前のように続くと勘違いしていたあの頃。
風早と柊を見て、俺は不安だったのだ。またばらばらになってしまうのではないかと。
「大の男が、女々しいな」
自嘲するように笑うと、真剣な碧の瞳とぶつかった。
「大切なんだろ?不安になるくらい大事なんだろ?」
那岐の手が頬を滑って首に回される。そのまま引き寄せられて抱き締められた。
「良いんだよ。不安になったって良いんだ。嫌だって言っても良いんだよ、忍人」
抱く腕に力が込もる。
ふと、彼も不安なのかと思った。風早や二ノ姫との関係が崩れる事を恐れているのだろうか、と。
「そういう時は、手放しては駄目だ。我が儘だって何だって押し通して掴んでおかなきゃ」
まるで那岐自身が自分に言い聞かせているようで、俺は那岐の背に腕を回した。
背を摩ると、首に回った腕の力がほんの少し弱まった。
「那岐」
「うん」
「仲直りしろ、と言ったらすると思うか?」
「忍人がそんながらじゃない事を言えば、驚いてあっさりするんじゃないの?」
「がらじゃないか」
「凄くね」
お互いに苦笑して腕を解く。那岐が、でもね、と肩を竦めた。
「末っ子は甘えても良いっていうのが特権なんだよ」
「末っ子?」
「だって忍人が一番年下なんだろ?」
あぁ、と瞬くと、ね?、と那岐が可笑しげに目を細める。
「末っ子は末っ子らしく上に我が儘言えば良いよ。だから――行ってきなよ。我が儘言いにさ」
ぽんぽんと肩を叩かれる。
俺はその手を取ると、それをそっと撫でた。
「あぁ…行ってくる」
待っていてくれ、と言った声は不思議と落ち着いていて、うん、と頷いた那岐を見て、やはり那岐がいてくれて良かった、と改めて感じた。
くん、といきなり那岐に胸元の衣を引かれる。
近付いた距離で那岐が強請るように目を閉じた。
笑って望む通りに瞼と額と、それから唇に触れるだけの口付けをすると、いってらっしゃい、と彼はにっこりと笑った。
「いちいち私の後を付いて回るのやめて下さいませんか!」な柊と「そんなのは俺の勝手だよ。良いじゃないか好きなんだから」な風早に振り回される忍人の話(えー!)
この後那岐に教わったお強請りをして仲直りさせるんです。
むしろそれがやりたかった…………『二人の裾掴んで悲しそうな顔する忍人』(どーん)
「貴方は本当に――忍人?」
「どうしたんだい?」
「あの…え、忍人?」
「ちょっと、大丈夫かい忍人?」
慌ててご機嫌取りに走る年長組(笑)
ちなみに、道臣も同門ですが、道臣の場合は付かず離れずだっただろうから申し訳ないのですが除外。
え?一番の年下は布都彦だって?
いやー、ここは忍人にしておきます。私の独断と偏見です。